アングロサクソン・ミッションとアトランティスの記録
プラトンが伝えるアトランティス
アトランティスの話が最初に登場したのは、プラトンの著書『ティマイオス』と『クリティアス』においてです。
それらに記述されたアトランティスは、大西洋――ジブラルタル海峡のすぐ外側――にあった広大な島とされています。
この島にある帝国は豊富な資源と強大な軍事力を有し、大西洋を中心に地中海西部を含んだ広大な領土を支配していたといわれています。
帝国に君臨していたのは海神『ポセイドン』の末裔である王家でしたが、人間との混血が深まるにつれて堕落――物質主義に走り、際限なく富と領土を求めたとか。
この様子を見たギリシア神話の主神『ゼウス』は神々を集めて討議し、アトランティスの敗北と滅亡を決定したそうです。
その後、アトランティス帝国は地中海沿岸部に征服戦争(紀元前9400年頃)を仕掛けましたが、アテナイ人と近隣諸国の連合軍に敗北。
これによって地中海西岸がアトランティス人の支配から解放された直後、大地震と洪水によって一昼夜のうちにアトランティス島は海底に沈んだと伝えられています。
プラトンの著書において、アトランティスの物語の語り手として登場するのは、プラトンの母方の曽祖父であるクリティアスであり、彼は祖父からこの話を聞き、クリティアスの祖父は政治家の『ソロン』から、ソロンはエジプトに旅した際に女神『ネイト』の神官から伝えられたとされています。
つまり、この話を信じるなら、アトランティスの元ネタは古代エジプトということになりますが、エジプト神話にはアトランティスに該当するような物語は確認されていません。
メソポタミア神話や旧約聖書にあるような大洪水神話が、エジプト神話にはなかったため、太古の文明世界が水没するという物語も語られなかったのです。
ただ、アトランティスの物語は古代エジプトに由来するというプラトンの著書の記述は、近代の神智学者たちのインスピレーションを刺激し、「アトランティス文明の残照は古代エジプトに見ることができる!」というアイデアを生み出すことになりました。
そうした流れの一例として「大ピラミッドはアトランティスの技術により建造された」という話も考えられるようになりました。
『超古代文明としてのアトランティス』を学術的に否定するのは容易いのですが、神智学におけるアトランティスの設定はインド神話などからも借用されているので、(神智学のアトランティス神話は)古代神話を近代風にアレンジした物語という解釈もできそうです。
𒉡画像引用 Wikipedia
The Library at Alexandria
(アレクサンドリア図書館)
𒉡画像引用 STEVE JACKSON GAMES
イルミナティカードとアーリア主義(アーリア人種至上主義)の関係に迫ったこのシリーズ記事も、今回で最終回となります。
19世紀から盛んになったアーリア主義――その中でも特にオカルト要素が強い思想『アリオゾフィ(アーリアの知恵/叡智)』は、神智学にて唱えられたアトランティス神話〈注1〉と不可分な関係だったといえるでしょう。
ナチスの母体の1つとなったトゥーレ協会の思想においても、アトランティスの場所がトゥーレ〈注2〉とされただけであり、この超古代文明が重要視されていることは共通していました。
そして、そんなアトランティス神話は現代のスピリチュアル思想や陰謀論にまで影響を与えたようです。
例えば、このシリーズ記事の『その1』でも言及した陰謀論動画『アングロサクソン・ミッション(⇒該当の動画はこちら)』――この動画では、『新型コロナウイルス』の出現を予言するかのような内容の他に、陰謀論やUFO(ロズウェル事件)などの話題がテンコ盛りとなっていますが、その1つとしてアトランティスの話もあり――
「アトランティスにおいて本当に起こったことの情報は、2・3千年前に焼け落ちた『アレクサンドリア図書館』にあった確率が非常に高いです」
――と(プレゼンターであるビル・ライアンという人物より)語られていました。
この動画で言及されたアトランティスとは、古代ギリシアの哲学者『プラトン』の著書に記された話〈注:左画像参照〉だけでなく、『超古代文明としてのアトランティス』も含んでいると思われます。
しかも、そんなアトランティスの記録がアレクサンドリア図書館にあったとか。
アレクサンドリア図書館とは、古代エジプトの『プトレマイオス朝』――初代はアレクサンドロス大王の配下(将軍)だったプトレマイオス1世――の時代からローマ帝国の時代にかけて、エジプトのアレクサンドリアに設置されていた古代世界最大の図書館です。
この図書館は、紀元前48年の戦災を皮切りに度々の災難に巻き込まれ、642年にイスラム勢力によってその蔵書の大部分が焼かれた〈注3〉といわれています。
※ただし、この説は疑問視〈注4〉もされています。
プラトンが伝えるところによると、アトランティスは(プラトンの時代から遡って)約9000年前――神智学の解釈だと紀元前9564年――に水没したといわれています。
また、アングロサクソン・ミッションでは「イルミナティには、地球物理学的な事件(地殻大変動)が11500年の周期で発生する〈注5〉という内部情報がある」とも語られていました。
つまり、『地球物理学的な事件』というのがアトランティス滅亡の原因であり、その具体的な内容を記した書物がアレクサンドリア図書館にあったということなのでしょう。
ついでに言うと、イルミナティは(現代でも遠くないうちに起こるかもしれない)『地球物理学的な事件』を危惧しているとのことでした。
プラトンが語ったアトランティスの伝説も、元ネタは古代ギリシアの賢人『ソロン』がエジプトに旅した際に女神『ネイト』に仕える神官から伝えられたことになっています。
ソロンが生きた時代のエジプトには、まだアレクサンドリア図書館は設置されていませんでしたが、その地域の古い伝承を記した書物が、後になってアレクサンドリア図書館に納められたとしてもおかしくはありません。
そういう意味では、アングロサクソン・ミッションの話はプラトンの伝承とも矛盾しないといえるでしょう。
※もっとも、ソロンの話に関しては、古代エジプトの神官が入手した(アトラ・ハシース叙事詩のような)メソポタミア地域などの神話文献が、エジプト神話のものとして誤解された可能性も考えられます。
アングロサクソン・ミッションによると、該当の書物は破損しながらも破棄を免れ、現在ではほぼ修復されてバチカン図書館に保管されているそうです。
※内部関係者なら、その情報にアクセスできるかもしれないとのことでした。
アングロサクソン・ミッションにて語られたことは非常に興味深いのですが、上記の話に証拠があるわけではありません。
ただ、古い文明のことが記述されたアレクサンドリア図書館の書物が流出し、それが現在も残っているという話はあり得なくもないような気がします。
ちなみに、イルミナティカードにも『The Library at Alexandria(アレクサンドリア図書館)』があります。
Sure, they burned down the building, but the books were already checked out.
It's the greatest storehouse of knowledge ever know and it's been guarded and enlarged, in deepest secrecy, for more than a thousand years.
確かに彼らはその建物を焼き尽くしたが、書物はすでに持ち出されていた。
それは1000年以上もの間、極秘に守られ、拡張されてきた、これまでにない知識の宝庫である。
このカード文には、焼失したアレクサンドリア図書館の書物の中には、事前に運ばれて無事なものがあったと記されていました。
つまり、その内容はアングロサクション・ミッションの情報と一致するというわけです。
これらの情報が真実かどうかは置いておくとして、実はアトランティスを前提とすると、アングロサクソン・ミッションのようなアーリア主義系――この場合は特に白人至上主義系――の陰謀論は話が繋がってくるのです。
次章では、そのことについて確認してみましょう。
【注釈 1~5】
■注1 神智学にて唱えられたアトランティス神話
神智学にて語られたアトランティスの話は、プラトンの著書で言及された範囲を遥かに超え、いわゆる超古代文明的な要素が色濃くなっている。
そのアトランティスの設定にはインド神話と似通った部分もあり、以下にそれを並べてみよう。
●(神智学版の)アトランティスには『オーム/オーン(サンスクリット語:ओम्=om/ॐ=oṃ)』――インドの諸宗教において神聖視される呪文――に相当する言葉があり、それが『タウ(tau)』とされている。
●『エドワード・ブルワー=リットン』の小説から借用した神秘的エネルギー『ヴリル〈『その4』参照〉』は、アトランティスにて使用された霊的エネルギーとされた。
これは、インド哲学でいうところの根源的なエネルギー『プラーナ』に相当するといえる。
●ヴリルによって稼働するというアトランティスの航空機は、インド神話に登場する航空機『ヴィマーナ』を連想させる。
なぜ、このような類似点があるかといえば、神智学の創始者の1人である『ヘレナ・P・ブラヴァツキー』がインドの宗教・哲学に傾倒していたからだと思われる。
そして、アーリア主義が流行した当時の西洋社会では、インドの宗教がアーリア人(この場合はインド・ヨーロッパ語族の全般の人々)の原型的な宗教・思想(に近い)と思われる傾向にあった。
おそらくは、ブラヴァツキー本人か彼女の思想に影響を受けた人々が、上記に見られるアトランティスの設定を次々と付け足していったのではないだろうか。
言うなれば、神智学で語られる『アトランティス(=超古代文明)の世界』とは、実質的に『インド神話の世界』に相当するのかもしれない。
■注2 アトランティスの場所がトゥーレ
『トゥーレ(ギリシャ語:Θούλη/ラテン語:Thūlē/英語:Thule)』は、古代ギリシア・ローマの文学や地図などに登場する最北端の地名である。
現代では、スコットランド北部のオークニー諸島・シェトランド諸島・エストニアのサーレマー島・ノルウェーのスモーラ島などが解釈の対象となっている。
中世の地誌における『ウルティマ・トゥーレ』――ラテン語で『最果てのトゥーレ』という意味――は、既知の世界の境界を越えた遠方の場所という比喩的な意味を持つようになった。
なお、トゥーレ協会では、アトランティスの場所がトゥーレだと信じられていたようだ。
■注3 この図書館は ~ イスラム勢力によってその蔵書の大部分が焼かれた
アレクサンドリア図書館は、古代エジプトのプトレマイオス朝時代からローマ帝国時代にかけて、エジプトのアレクサンドリアに設置されていた古代世界最大の図書館である。
この図書館は、ムセイオンと呼ばれる研究機関の一部だった。
また、セラペイオン(セラピス神殿)にはこの図書館の姉妹館があったという。
アレクサンドリア図書館が焼かれ破壊されたという話は広く知られているが、実際にはこの図書館は数世紀にかけて徐々に衰退していったようだ。
図書館の衰退は、プトレマイオス8世治世中における前145年の知識人たちの追放と共に始まったとされている。
最初に大きな災厄を受けたのが、前48年のローマとエジプトの戦いである。
ローマの内戦でエジプトに遠征していたユリウス・カエサルは、劣勢の状況を脱するために相手の艦隊に火を放ったが、これが陸地まで達し、海岸近くにあった大図書館が焼失したというのだ。
この被害規模については定かになっておらず、焼失したのは図書館自体ではなく倉庫だったという説もあり、少なくとも図書館が完全に破壊されたというわけではないようだ。
この後もアレクサンドリアは文化の中心として存在していた。
ただ、211年のカラカラ帝によるアレクサンドリアへの暴政、391年のテオドシウス帝治世下における司教テオフィルスのセラペイオン破壊命令などにより、まだ残っていたセラペイオンの図書館も大きな被害を受けた。
642年には、時のイスラム系征服者が「コーラン(クルアーン)の教えにかなう本ならよし。さもなくば燃やしてしまえ」と命令したことにより、アレクサンドリア図書館の蔵書が多数燃やされたという〈この件については『注4:この説は疑問視』も参照〉。
こうして、アレクサンドリアの知的文化の歴史は終焉を迎えることとなった。
■注4 この説は疑問視
後世のアラビア語の史料によると、642年にアレクサンドリアがアラブの将軍『アムル・イブン・アル=アース(‘Amr ibn al-‘As)』によって征服された後、アレクサンドリア図書館が時のカリフ(イスラムの指導者)『ウマル・イブン・アル=ハッターブ(‘Umar ibn al-Khattāb)』の命令によって破壊されたとされている。
この時の経緯については、13世紀のアラブ人『イブン=アル=キフティ』による『賢者の歴史』という書物にて、次のような話が伝えられている。
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アレクサンドリア占領の際、アムルは『ヨハネス・ピロポノス(John Philoponus)』――東ローマ帝国期のアレクサンドリア出身のキリスト教徒でアリストテレス哲学の注釈者――と知り合った。
ヨハネス・ピロポノスは、プトレマイオス2世が収集した書物が王家の宝物の中にあり、自分たちに役立つかもしれないと申し出た。
アムルは「カリフの許可なくその書物を勝手に処分することはできない」と答え、書物の取り扱いについてカリフのウマルに確認した。
ウマルの返事は「そこに書かれた内容が、イスラム教の聖典『クルアーン』と一致するならそれらの書物は必要ない。イスラムの教えに反するならば、それらは望ましくないものなので全て焼却せよ」ということだった。
この指示を受け、アムルは各書物をアレクサンドリアの浴場に配分し、燃料として利用させた。
全ての書物を燃やし尽くすのに6ヶ月を要したという。
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上記の話について、これを立証する資料はなく、イスラム勢力が宗教・思想に比較的寛容だったといわれることとも矛盾する。
当時は十字軍がアレクサンドリアやアレッポなどのアラブ人の都市を略奪していた時代であり、その品目の中には多数の書物が含まれていた。
それらの書物は、いわゆる『12世紀ルネサンス』で盛り上がったヨーロッパ人の知的関心のために略奪された。
ということは、(アトランティスのことが記されたものかどうかはともかく)ヨーロッパへ持ち出されたアレクサンドリア図書館の書物があったことは間違いないように思われる。
■注5 地球物理学的な事件(地殻大変動)が11500年の周期で発生する
陰謀論動画『アングロサクソン・ミッション』の元ネタとなったインタビュー原稿では『11500年ごと』に地球物理学的事件が起こると証言者は語っていたが、動画では『15000年ごと』になっていた。
何故、ビル・ライアン(プレゼンター)がこのように期間を言い換えたかは不明。
意図的なのか、それとも単なる言い間違えなのか……。
アングロサクション・ミッションから見えるアーリア主義
ジョージア・ガイドストーン(上)
ガイドストーンの破壊(下)
『ジョージア・ガイドストーン(Georgia Guidestones)』は1980年にアメリカ合衆国ジョージア州エルバート郡で建造された花崗岩によるモニュメントです。
1979年6月、『R.C.クリスチャン』と名乗る人物が、石材建築業者の『Elberton Granite Finishing Company』にモニュメントの建造を発注したとのことですが、発注者の名前は本名ではないそうです。
英語などの8つの言語(日本語はない)で書かれたメッセージは、陰謀論的な憶測を呼んでいます。
特に問題なのが、第1条の「大自然と永遠に共存し、人類は5億人以下を維持する(Maintain humanity under 500,000,000 in perpetual balance with nature.)」という項目です。
これが陰謀論でいうところの『人口削減計画』を連想させるからです。
活動家のマーク・ダイス〈注7〉は、このモニュメントが魔王ルシファーを信仰する秘密結社の人物によって建てられたものだから破壊されるべきだと主張しました。
ある地方教会の牧師は「太陽崇拝者、カルト崇拝者、悪魔崇拝者のために作られたものと確信した」と表明したそうです。
また、モニュメントの建設を依頼したのは『薔薇十字団』ではないかと示唆する意見もあるとか。
上記のようにジョージア・ガイドストーンは、陰謀論者にとって憎悪の対象になったためか、様々な落書き・汚損・改変行為が繰り返され、2022年7月6日には爆破事件まで引き起こされました。
この時、スワヒリ語・ヒンディー語の石板が破壊され、キャップストーン(笠石)にも大きな被害がありました。
防犯カメラのモニターには現場から立ち去る車両が映っていたので、何者かによって破壊行為がなされたのは間違いないでしょう。
ジョージア州捜査局(GBI)によると、残った石碑も安全のために解体されたとのことです。
ジョージア・ガイドストーンは冷戦中の時代に建設されました。
故にその建設の意図は、第3次世界大戦後の生存者へのメッセージであり、「人口を5億人以下に維持する」という碑文は、人類がすでにこの数以下に減少したという前提で記されたという可能性も指摘されています。
仮にこの説が正しかったとしても、ジョージア・ガイドストーンの碑文が数々の誤解を生んだのは事実です。
𒉡画像引用 Wikipedia
黒い太陽
𒉡画像引用 Wikipedia 、Dorinda Balchin
アトランティスとアングロサクソン・ミッションの関係を考えるために、まずはアングロサクソン・ミッションのポイントを以下に並べます。
※アングロサクソン・ミッションは「支配層の会議に偶然出席してしまった」と語る人物(証言者)の話を元に作成されています〈『アングロサクソン・ミッションとUFO その2(章:証言者について)』参照〉。
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●証言者が参加した会議では、『人口削減』を目的とした各計画の進捗確認と、計画遂行に当たっての問題点について語られていた。
●人口削減を目指す理由は、この地球では定期的に世界規模の大災害が起こるので、その後の世界を白人主導で再建し易くするためである。
※アングロサクソン・ミッションの動画や原稿では明言されなかったのですが、陰謀論では人口削減計画の主対象は白人以外の人種といわれています。
つまり、人口削減計画は大災害後においても白人勢力を(人口比率的に)優位にするために行われる――と言いたいのかもしれません。
●人口削減計画は、現人類ではなくそれより上位の知的生命体が考案したことである。
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『その1』でも述べた通り、アングロサクソン・ミッションとは、支配層が企てている(とされる)人口削減計画を指しています。
人口削減計画を進める理由は、定期的(約11500年周期)に発生する世界規模の大災害の後、白人主導で世界を再建し易くするためと語られていました。
しかも、その計画は支配層ではなく、(支配層より)上位の知的生命体(地球外生命体=宇宙人)によって考案されたことだとか。
『ジョージア・ガイドストーン(Georgia Guidestones)〈注:左画像参照〉』に「大自然と永遠に共存し、人類は5億人以下を維持する」という碑文があったためか、アングロサクソン・ミッションは陰謀論者に強い印象与えました。
しかし、客観的に考えてみると、その内容は荒唐無稽な話にも見えます。
特に、宇宙人が白人を支配者側にさせようとする――あるいは白人が支配者であることを容認する――理由が述べられていないことがポイントです。
過去にモンゴル帝国やオスマン帝国などがヨーロッパ諸国を脅かしたように、世界史は必ずしも白人中心で動いていたわけではありません――なのに、なぜ宇宙人は白人を尊重するのでしょうか。
首を傾げることも少なくないアングロサクソン・ミッションですが、実は『アリオゾフィ』――アーリア人種至上主義を神智学の世界観で再解釈した思想――を参考にすると、この陰謀論は筋が通った設定になっているのです。
そのことを理解するためには、アングロサクソン・ミッションにおいて地球外生命体といわれている存在をアトランティス人に変換する必要があります。
アングロサクソン・ミッションでは、アトランティスという超古代文明のことがわざわざ言及されていたのに、人類よりも上位の存在として(アトランティス人ではなく)地球外生命体の方が言及されていました。
そこで、アングロサクソン・ミッションにて語られらた地球外生命体とは、実はアトランティス人(の霊)の隠喩であると仮定してみると、興味深い可能性が浮かび上がってきます。
神智学にて語られた『根源人種(Root race/ルート・レイス)〈注6〉』という説では、『アトランティス人(第4の根源人種)』から進化したのが『アーリア人(第5の根源人種)』とされています。
また、19世紀末から20世紀前半の頃は『アーリア人=白人』という観念が強い傾向にありました。
仮に(アングロサクソン・ミッションにて言及された)支配層が、古い白人至上主義的な思想を持っているとしたら、彼らが接触したとされる上位の知的生命体とは、実はアーリア人(=白人)の御先祖である『アトランティス人の霊』だったという理屈も考えられるようになります。
端的に言えば、先祖(アトランティス人)が子孫(アーリア人=白人)を守り、繁栄させようとしているという話ですね。
奇しくも、トゥーレ協会(ナチスの母体の1つ)では「アトランティス文明の精霊によってその叡智を伝授される」という信仰があったそうです。
つまり、アングロサクソン・ミッションにて語られた支配層とは、トゥーレ協会と似たような思想を持っていたことになります。
アドルフ・ヒトラーが率いたナチスは(一部を除き)トゥーレ協会の思想に余り影響されなかったともいわれていますが、ネオナチの方はそうでもないようです。
元ナチス親衛隊(略号:SS)の作家にしてネオナチの思想家である『ヴィルヘルム・ランディヒ(ドイツ語:Wilhelm Landig)』などによりトゥーレ神話が広められ、ネオナチは(ナチス以上に)オカルトに傾倒していきました。
だからこそ、ウクライナの極右国家警備隊『アゾフ連隊』も『黒い太陽』というオカルト的なシンボルを掲げていたのではないでしょうか。
これまでに集めた情報を俯瞰すると、「アングロサクソン・ミッションにて語られた支配層(=イルミナティ)とは、実質的にネオナチ(あるいはネオナチ的な思想を持った者たち)である」と考えるなら、そこに秘められた設定を理解し易くなるでしょう。
(それが事実であるかどうかはともかく)上記のことを前提とするなら、(アングロサクソン・ミッションの話における)支配層に白人至上主義や優生学の傾向がある理由が明確になるからです。
ただ、それでもなお疑問は残ります。
次章では、その点について考えてみたいと思います。
【注釈 6~7】
■注6 根源人種(Root race/ルート・レイス)
近代神智学の創始者の1人である神秘思想家『ヘレナ・P・ブラヴァツキー(Helena Petrovna Blavatsky)』は、その著書『シークレット・ドクトリン』において、人類の進化を(未来の分も含めた)以下の7段階に分けた。
●第1根源人種――ポラリアン(Polarian)
●第2根源人種――ハイパーボリア人(Hyperborean)
●第3根源人種――レムリア人(Lemurian)
●第4根源人種――アトランティス人(Atlantean)
●第5根源人種――アーリア人(Aryan)
●第6根源人種――未来人
●第7根源人種――未来人(完全にスピリチュアル的な存在)
これらは『根源人種(Root race/ルート・レイス)』と呼ばれている。
第1の根源人種は肉体や性別がないアストラル(またはエーテル)的な存在とされ、進化の段階が進むごとに、次第に現生人類のような姿になっていったという。
■注7 マーク・ダイス
『マーク・ダイス(Mark Dice)/1977年12月21日生まれ』はアメリカの陰謀論者・活動家・作家・アメリカのYouTuber。保守系の思想の持主。旧名は『ジョン・コナー(John Conner)』。
アトランティスの遺産(?)とアングロサクソン・ミッションの真偽
The Great Pyramid(大ピラミッド)
𒉡画像引用 STEVE JACKSON GAMES
プロビデンスの目
上段の画像は1935年に採用されたアメリカ合衆国の1ドル紙幣(裏面)に見られる『プロビデンスの目』、下段左が古代エジプト(新王国時代)のピラミディオン(ピラミッド状の四角錐)、下段右がエクアドルで発見された『ピラミッド・アイ・タブレット』です。
下段の2つの遺物――特に『ピラミッド・アイ・タブレット』の方は、『プロビデンスの目』の直接的なルーツではないかと思わせるほどのデザインとなっていますが、こちらは学術的な調査が行われていないため、真贋については不明です。
なんにせよ、今ではすっかり有名になった『プロビデンスの目』の由来が、古代文明まで遡るのは十分にあり得る話です。
𒉡画像引用 Wikipedia、古代エジプト展、AlphaZebra
ルッキンググラス・プロジェクト
アレクサンドリア図書館にはアトランティス滅亡の際の情報があり、それが記された書物は(現在)バチカン図書館に保管されている――アングロサクソン・ミッションでは、このようなことが語られていました。
この話が事実であり、イルミナティの支配層が該当の書物を読んだとしても「どうしてその内容を信じることができるのか」ということについては疑問が残ります。
太古の文明が滅亡したことを伝える物語なら、旧約聖書やその他の神話などにも記されていますが、一般人としてはそれらをおとぎ話の類と解釈するだけでしょう。
アトランティスという超古代文明を重要視する『アリオゾフィ(アーリア主義を神智学の世界観で再解釈した思想)』が支配層の信条になっていたとしても(神話的な滅亡話を真に受け)それを理由として陰謀を企てているとしたら「頭がおかしい」としか言いようがありません。
ここにおいて、オカルティックかつアクロバティックな説を唱える必要が生じます。
※荒唐無稽な陰謀論になるほど、その理屈を通すために壮大な設定を組み込むことが必要になってくるのです。
都合がよいことに、イルミナティカードには『The Great Pyramid(大ピラミッド)』というカードがありました。
カード文には以下のことが書かれています。
The keepers of the Pyramid have a limited power to foresee the future.
ピラミッドの番人には、限定的だが未来を予知する能力がある。
『ピラミッドの番人』が支配層のことを指しているとしたら興味深いところです。
支配層がアリオゾフィを信じているのなら、なお、その可能性が高いかもしれません――アリオゾフィの源流となった神智学では、古代エジプト文明はアトランティスの継承者〈注8〉と考えられているからです。
奇しくも、イルミナティの象徴の1つとされる『プロビデンスの目』の形状は、古代エジプトに由来しているといわれています。
カード文によると、『ピラミッドの番人』には(限定的ながらも)未来を予知する能力があるとか。
それが古代エジプト――ひいてはアトランティス――のような古代文明から受け継いだ叡智によるものなのかどうかはわかりませんが、陰謀論界隈では『ルッキンググラス』と呼ばれる未来予知装置の存在も噂されています。
カード文は、この装置のことを暗示しているのでしょうか。
※ルッキンググラスの考察については『アングロサクソン・ミッションとUFO その12(章:支配層と時間能力)』と『アングロサクソン・ミッションとUFO その13』を参照。
なんにせよ、支配層が未来を予知する方法を知っており、その予知について正しいと確信を持っているのなら、それがアングロサクソン・ミッションにて語られた人口削減計画を進める理由になり得るでしょう。
とはいえ、ブログ主がここまで設定を補完しても(壮大な話になり過ぎて)アングロサクソン・ミッションには説得力があるとはいえません。
しかし、現状(2022年11月時点)の情勢としては、部分的にアングロサクソン・ミッションの通りになっているような気がしなくもないです。
アングロサクソン・ミッションにて語られた陰謀の流れは以下の通りです。
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イスラエルがイランを攻撃し、その後、停戦となる。
同時に全ての欧米諸国で国民に対して(各政府軍による)強力な支配体制が敷かれるようになる。
②パンデミック(広範囲に及ぶ流行病)
中国が生物兵器で攻撃を受ける。
その生物兵器はインフルエンザのような病気であり、世界中に広がる。
上記の後、第3次世界大戦が起こる。
その時までに戦争や疫病、あるいはそれらに関連した様々な非常事態によってインフラなどの社会機能が停止に追い込まれ、世界人口の約50%が削減される見込みとなる。
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もちろん、アングロサクソン・ミッションの予定から外れたこともあります。
新型コロナウィルスの前に『限定的な核戦争』は起こっていませんし、中国を発生源とした疫病についても(パンデミックにはなりましたが)大きく人口が減少するよう事態にはなっていません。
パンデミックの後に発生した『ロシア・ウクライナ戦争(2022年2月24日より開始)』は、核戦争になりそうな予感を与えています。
ただ『NATO VS ロシアとその同盟国』という状況なので、各国力の差を考えると、これを世界大戦というのは少し大袈裟でしょう。
アングロサクソン・ミッションの話を信じるなら、この計画を遂行しようとして失敗したのが現状という感がなくもないですが、結果的には「アングロサクソン・ミッションの予定通りになっていない部分も多々ある」ということになります。
結局、アングロサクソン・ミッションとはなんなのでしょうか。
そして、この陰謀論にも見られるようなアーリア主義は、現代においてどんな意味があるのでしょうか。
次章において、それらの考察をまとめたいと思います。
【注釈 8】
■注8 神智学では、古代エジプト文明はアトランティスの継承者
上記の示す一例として、神智学では『セラピス・ベイ(Serapis Bey)』と呼ばれる人物の話がある。
セラピス・ベイは、信奉者たちを導く『古代の知恵の大師(Masters of the Ancient Wisdom』の1人とされる存在であり、古代エジプトの習合神『セラピス(Serapis)』と同一視された。
イルミナティカードが暗示する現代の世相
アーリア主義関連のイルミナティカード
上記のようなカードがある以上、イルミナティカードはユダヤ陰謀論のみを基準として構成されているわけではないようです。
アーリア主義的な思想を中心に据えた時、陰謀論は従来のイメージとは異なる姿を見せるでしょう。
かつて有色人種たちを苦しめてきたこの思想は、今もなお、西洋の権力者たちの心の中で、強く息づいているのでしょうか……。
𒉡画像引用 STEVE JACKSON GAMES
ラグナロクの火
画像はドイツの画家『エミール・ドプラー(Emil Doepler)』が描いた『ラグナロク(神々の黄昏)』終盤の光景です。
ラグナロクとは、神々すらも次々に斃れる北欧神話の終末です。
巨人『スルト』が(一説では魔剣『レーヴァテイン』により)放った火炎は世界を覆い、主神『オーディン』の宮殿も炎上させました。
人類の歴史の果てにおいても、世界はこのような終末の劫火に包まれるのでしょうか……。
𒉡画像引用 Wikipedia
陰謀論動画『アングロサクソン・ミッション』には、真実を含んだ情報もあるかもしれません。
しかし、全体を通してよく考えてみると、その予言(予定)は必ずしも当たっているとはいえず、(聞いたところでどうしようもない?)スピリチュアル的な話〈注9〉もあります。
また、そのタイトルとストーリーは――陰謀論用の話題作り(商売)が目的ではないとすれば――アングロ・サクソンを敵視している者たちが考えた(西側の資本主義勢力に対するネガキャンとしての)情報操作に見えなくもないでしょう。
奇しくも、ロシアのプーチン氏(現時点の大統領)も、アングロ・サクソンを敵視〈注10〉しているようなので、これがアングロサクソン・ミッションに秘められた『政治的な意図』である可能性も考えられます。
ただ、(アングロサクソン・ミッションにも見られるような)アーリア主義を未だ信奉している者たちがいるのは事実であり、世相を反映するものが少なくないイルミナティカードでも、そうした状況が示されたのかもしれません。
あるいは、(ユダヤ教系の思想や悪魔崇拝ではなく)アーリア主義こそイルミナティの真の思想であると、イルミナティカードは暗示しているのでしょうか……?
このシリーズ記事では、そんなアーリア主義と関連がありそうなカードを紹介しましたが、今一度それらを左画像において並べてみました。
【左上】KKK(クー・クラックス・クラン)
【右上】Hammer of Thor(トールのハンマー)
【左下】Hitler's Brain(ヒトラーの脳)
【右下】The Thule Group(トゥーレ協会)
また、オカルト系アーリア主義(アリオゾフィ)にとっての重要なルーツ――アトランティスと間接的に関連があるかもしれないカードが、前章で紹介した『The Library at Alexandria(アレクサンドリア図書館)』と『The Great Pyramid(大ピラミッド)』です。
イルミナティカードには、直接的にアトランティスを示すものはありませんが、オカルト系アーリア主義を追っていくと、必然的に『アトランティスの謎』に辿りつきます。
( º дº)<「アトランティスの謎といっても、ゲームの方じゃないよ」
現代のオカルト系陰謀論は、レプティリアン(宇宙人)や悪魔崇拝などに比重が置かれる傾向が強いですが、アトランティスに代表される超古代文明を中心に考えた方が、雑多になっているその設定を整理し易いのではないかと、ブログ主は考えています――それが真実かどうかは置いておくとして。
(オカルト系にせよ、そうでないにせよ)アーリア主義とは、本質的に宗教的な妄信であるともいえますが、乱世になれば、それは白人勢力をまとめるための求心点には成り得るかもしれません。
グローバリズムが生み出した格差は、再び民族主義に歪な形で活力を与えようとしています。
今(2022年11月時点)は『ロシアの独裁者』のみに焦点が当たっていますが、(『その2』でも述べたように)いずれ各地で『ヒトラーの脳』を持った者たち(独裁者)が表舞台に出る可能性も考えられます。
それは現代の文明に停滞をもたらすのか、あるいは飛躍的な発展をもたすのか――少なくとも、群雄たちが武力を振るう乱世になる度に人口が激減してきたのは、歴史が示す通りです。
そうした人類と文明の栄枯盛衰の果てに、北欧神話の最終戦争『ラグナロク』の如き世界の破滅が訪れるのかもしれません。
人類は、常に時代の流れに振り回されながら生きてきました。
絶望的な乱世の運命と対峙した時、各人には如何なる道が残されているのでしょうか……?
では、これにて『イルミナティカードとアーリア主義』シリーズは完結です。
ここまで長い記事を読んでいただいた皆様に心から感謝致します。
ありがとうございました。
【注釈 9~10】
■注9 スピリチュアル的な話
アングロサクソン・ミッションには、ビル・ライアン(プレゼンター)と情報提供者が読者(視聴者)に向けて語ったメッセージもあった。
※陰謀論動画『アングロサクソン・ミッション』は、情報提供者(証言者)とのインタビュー原稿に基づいて作成された。
その内容は『マヤ文明の予言(2012年人類滅亡説)』に関係する内容が少なからずあったが、この予言の時期には世界を揺るがすような出来事はなかった。
※『アングロサクソン・ミッションとUFO その10』参照。
■注10 ロシアのプーチン氏(現時点の大統領)も、アングロ・サクソンを敵視
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まってから2日後の2022年2月26日、ロシア国営通信が勝利を祝う内容の記事を配信した後、すぐに削除したという。
この記事を読むと、プーチン氏がアングロ・サクソン(英米)を敵視している様子が窺える。
参考・引用
■参考文献
●アーリア神話 レオン・ポリアコフ 著 アーリア主義研究会 翻訳 法政大学出版局
●アーリヤの男性結社―スティグ・ヴィカンデル論文集
スティグ・ヴィカンデル 著、前田耕作 編集、 Stig Wikander 原著、檜枝陽一郎 訳、与那覇豊 訳、中村忠男 訳 言叢社
●エッダ―古代北欧歌謡集 谷口幸男 翻訳 新潮社
●いちばんわかりやすい 北欧神話 杉原梨江子 監修 じっぴコンパクト新書
●来るべき種族 エドワード・ブルワー=リットン 著 小澤正人 翻訳 月曜社
●"Vril" Die kosmische Urkraft・Wiedergeburt von Atlantis Johannes Täufer 著
●神秘学大全 ルイ・ポーウェル 著 ジャック・ベルジェ 著 伊東守男 翻訳 サイマル出版会
●シークレット・ドクトリンを読む ヘレナ・P・ブラヴァツキー 著 東条真人 翻訳 トランス・ヒマラヤ密教叢書
●アーリア神話 レオン・ポリアコフ 著 アーリア主義研究会 翻訳 法政大学出版局
●アーリヤの男性結社―スティグ・ヴィカンデル論文集
スティグ・ヴィカンデル 著、前田耕作 編集、 Stig Wikander 原著、檜枝陽一郎 訳、与那覇豊 訳、中村忠男 訳 言叢社
●The Secret History of the Reptilians:レプティリアンの秘史 著者: Scott Alan Roberts
●北極の神秘主義 ジョスリン・ゴドウィン 著、松田和也 翻訳 工作舎
●The Secret History of the Reptilians Scott Alan Roberts 著
●古代オリエント集(筑摩世界文學体系1) 筑摩書房
●古代メソポタミアの神々 集英社
●SUMERIAN LEXICON JOHN ALAN HALLORAN Logogram Publishing
■参考サイト
●Wikipedia
●WIKIBOOKS
●Wikiwand
●Weblio辞書
●ニコニコ大百科
●ピクシブ百科事典
●コトバンク
●goo辞書
●Atlantipedia
●未唯への手紙
●世界史の窓
●国際連合広報センター