The Thule Group(トゥーレ協会)
The Thule Group
𒉡画像引用 STEVE JACKSON GAMES
トゥーレ協会の紋章
𒉡画像引用 Wikipedia
アントン・ドレクスラー(左上)
カール・ハラー(右上)
ドイツ労働者党のロゴ(下)
𒉡画像引用 Wikipedia
ハインリヒ・ヒムラー
𒉡画像引用 Wikipedia
Hitler's Wizards are still alive.
In fact, some of them are getting younger...
〈中略〉
If Hitler's Brain is linked to this group, they can not be captured or destroyed.
『ヒトラーの魔法使い』はまだ生きている。
それどころか、彼らの一部は若返りつつある…...
〈中略〉
『ヒトラーの脳』がこのグループとリンクしていれば、捕獲も破壊もできない。
左画像のカードには、意味深なこと(上記の文)が書かれていますね……。
イルミナティカードにも取り上げられた『トゥーレ協会(ドイツ語:Thule-Gesellschaft/英語:Thule Society)』とは、1918年にミュンヘンで結成された秘密結社です。
この結社の名称は、古典文学にて伝えられる伝説の地(島)『トゥーレ(ギリシャ語:Θούλη/ 英語:Thule)』に因んでいます。
民族主義的・神秘主義的な秘密結社『ゲルマン騎士団/ゲルマン教団(Germanenorden)』より委託を受けた『ルドルフ・フォン・ゼボッテンドルフ(Rudolf von Sebottendorf)』――旧名:ルドルフ・グラウアー(Adam Alfred Rudolf Glauer)――により、ゲルマン騎士団の非公式なバイエルン支部として成立されました。
ゲルマン騎士団の主な活動内容は、ユダヤ人の活動を監視し、反ユダヤ主義的な資料を配布する拠点になることでした。
この結社への入会希望者は、ゲルマン系であることを証明する必要があり、結婚している場合はその妻の血筋も証明しなければならなかったそうです。
ゲルマン騎士団の思想や儀式は、神智学・アリオゾフィ〈注1〉・フリーメイソン・ワーグナーのオペラ〈注2〉などの影響を受けていたといわれています。
このような結社の分派である以上、当然トゥーレ協会もアーリア主義的・反ユダヤ主義的な思想を掲げていました。
また、設立者であるゼボッテンドルフは、フリーメイソンであると共に、スーフィズム(イスラム教の神秘主義)や占星術など、広くオカルトに通じた人物だったとか。
会員数は1918年の時点でミュンヘンに250人、上部組織であるゲルマン騎士団のバイエルン州全体の会員数を合わせても1500人程度の数でしたが、トゥーレ協会の精神的影響力は大きく、民族主義団体の連合体『全ドイツ同盟』とも密接な関係があり、他複数の国粋主義的な団体の母体になったそうです。
トゥーレ協会の会員だった『アントン・ドレクスラー(Anton Drexler)』は、ミュンヘンの様々な極右的な労働者団体とトゥーレ協会との繋がりを構築し、1919年1月5日(同じくトゥーレ協会の会員だった)『カール・ハラー(Karl Harrer)』と共に『ドイツ労働者党(ドイツ語:Deutsche Arbeiterpartei/英語: German Workers' Party/略称:DAP)』を設立しました。
後の総統『アドルフ・ヒトラー(ドイツ語:Adolf Hitler)』は、1919年9月にこのドイツ労働者党に入党〈注3〉したのです。
1920年2月末に、ドイツ労働者党は『国民社会主義ドイツ労働者党(ドイツ語:Nationalsozialistische Deutsche Arbeiterpartei/英語:National Socialist German Workers' Party /略称:NSDAP)』――つまり『ナチス』あるいは『ナチス党』などと呼ばれた組織として再結成されましたが、その頃までには、ゼボッテンドルフはトゥーレ協会を脱退し、ドイツ労働者党やナチスに入ることはありませんでした。
ドイツ労働者党の設立者の1人だったカール・ハラーは、1920年1月(党名改称の前月)にヒトラーとドレクスラーによって同党から追放されました。
ヒトラーが、トゥーレ協会の指示から離れて党の綱領の策定を求めたことに対し、カール・ハラーが反対したからです。
ハラーを追放したドレクスラーにしても、その後の運命は冴えないものでした。
1921年に党内で頭角を現したヒトラーに実権を奪われ、以後、ドレクスラーがナチスにおいて権力を振るうことはなかった〈注4〉のです。
こうして情報を精査してみると、トゥーレ協会やその思想に影響を受けた人々が、ナチスを生み出すきっかけになったのは事実でしょうが、ナチスの政策には(ほぼ)影響しなかったと思われます。
トゥーレ協会は1920年代半ばにはその重要性を失っており、1925年頃に解散した〈注5〉とされています。
また、1933年以降になると、秘教的な組織は弾圧されるようになり、1935年には『反メイソン法』――フリーメイソンおよびその類似団体の活動を禁止する法律――によってその多くが解散させられました。
つまり、ヒトラー自身はトゥーレ協会が唱えた思想には関心が薄かったようです。
ただ、トゥーレ協会の民族主義的・反ユダヤ主義的な思想およびその会員たちの情熱が、ヒトラーやナチスに利用されたことは間違いないでしょう。
このような歴史は、我々が民族主義と宗教(神秘)的思想と権力の関係を考察するうえでの参考になりそうです。
トゥーレ協会の思想とナチスの政策には関係があった――と考える陰謀論者にとって、上記の内容は面白くないかもしれません。
ナチスの親衛隊長官だった『ハインリヒ・ヒムラー(ドイツ語: Heinrich Luitpold Himmle)』が神秘主義に高い関心を持っていたのは事実です。
オーストリア出身の民族主義的オカルティスト『カール・マリア・ヴィリグート(Karl Maria Wiligut)』が語る神秘的な思想〈注7〉に傾倒したヒムラーは、彼を親衛隊に招き入れました。
ヒムラーは、親衛隊の隊員たちからキリスト教を切り離し、彼が好む異教的な思想に取り込もうとしたようです。
その一方で、親衛隊を組織するうえでヒムラーが模倣したのは(トゥーレ協会の思想ではなく)『イグナチオ・デ・ロヨラ(Íñigo López de Oñaz y Loyola/英語:Ignatius of Loyola)』が創始した『イエズス会』だったという説もあります。
いずれの話にせよ、ヒムラーがトゥーレ協会から多大な影響を受けたという線は薄いでしょう。
しかし、トゥーレ協会はオカルト的な意味でのナチスの陰謀論における中心的な話題の1つとなりました。
その中には「ヴリルという神秘的エネルギーによって稼働するナチスのUFO〈注6〉を開発した」という話もあります。
イルミナティカード『The Thule Group(トゥーレ協会)』の絵を見ても、なにやら不思議な力を発動させる魔術師が描かれているので、このカードはヴリルにも関係しているのかもしれません。
そこで、次回は(イルミナティカードの話とは離れますが)ヴリルやトゥーレなどの神秘的な伝説について考察したいと思います。
【注釈 1~7】
■注1 アリオゾフィ
アリオゾフィは、神智学とアーリア=ゲルマン人種至上主義が結びつき、アーリア人種至上主義を神智学の世界観で再解釈した思想である。
■注2 ワーグナーのオペラ
音楽家『ヴィルヘルム・リヒャルト・ワーグナー(Wilhelm Richard Wagner)』は、反ユダヤ主義者としても知られている。
■注3 後の総統『アドルフ・ヒトラー』は、1919年9月にドイツ労働者党に入党
入党後のヒトラーは、周辺国や国内の政治団体に対する過激な演説で名前を知られるようになり、党内において有力な政治家と目されていった。
■注4 ドレクスラーがナチスにおいて権力を振るうことはなかった
アントン・ドレクスラーの失脚については、『Wikipedia』に詳しく書かれていた。
以下は『Wikipedia』からの引用である。
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『ドイツ労働者党』が『国民社会主義ドイツ労働者党』に改名された後、党内ではヒトラーが頭角を現し、1921年に入るとヒトラーの勢力は盤石なものとなっていた。
これに危機感を覚えたドレクスラーは、1921年6月にヒトラーがベルリンに出かけている間に無断で他の右翼政党との共闘や合併を協議し始めた。
ドレクスラーの独断を知ったヒトラーは7月11日に離党を宣言した。
党幹部は党の顔であるヒトラーの離党が党の消滅に繋がることを危惧し、引き留めに躍起となった。
3日後、ヒトラーは党への復帰の条件として自分に独裁権を与えるように書面で要求――党幹部がこの要求を認めたため、ヒトラーは復党した。
7月25日にミュンヘン警察に「ヒトラーは危険人物である」と密告したが、取り合ってもらえなかった。
7月29日、554票中553票を得てヒトラーが新党首に選出されると、ドレクスラーは名誉党首に祭り上げられ、党での実権を失った。
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上記の後、ドレクスラーが政治の表舞台に立つはことはなく――ナチスの母体となった政党の設立者ということで宣伝に利用されることはあった――第2次世界大戦中の1942年にバイエルン州(ミュンヘン)で死去した。
■注5 トゥーレ協会は1920年代半ばにはその重要性を失っており、1925頃に解散した
1933年、トゥーレ協会復活のために帰国したルドルフ・フォン・ゼボッテンドルフは、『ヒトラーが来る前に(Bevor Hitler kam)』という本を出版し、「トゥーレ協会はヒトラーが総統に至る道を切り開いた」と主張した。
しかし、1933年以降における秘教的な組織への弾圧により、1934年にゼボッテンドルフも出版を禁じられた。
彼自身も逮捕・投獄されることになり、その後、トルコに亡命した。
■注6 ナチスのUFO
陰謀論には、ナチスがUFOを開発しており、それを担当していたのがヴリル協会だったという話がある。
また、ヴリル協会とは別に、ナチス親衛隊(SS)の内部に設置された『E4』という部門も、UFO開発を担っていたとか。
ヴリル協会が開発したUFOは7種類・17機があり、そのコードネームには『ヴリル』という名称が与えられたという(E4が開発したUFOのコードネームは『ハウニヴー』)。
「それだけの技術力があるなら、連合国に負けていなかったのでは?」――というツッコミはしない方が、この種の話は楽しめるだろう。
■注7 『カール・マリア・ヴィリグート(Karl Maria Wiligut)』が語るドイツ中心の神秘的な思想
自称『霊能者』であるカール・マリア・ヴィリグートは、先祖の記憶にアクセスできると主張し、独自の思想を説いた。
その記憶によると、『イルミン教(Irminism/イルミズム)』こそが、太古の時代のドイツにあった本来の民族宗教とのことだ。
彼の主張によると、イルミン教の神は『Krist』であり、後にキリスト教がそれを盗用して『Christ(キリスト)』を作り出したという。
以下は、ヴィリグートが説くイルミン教の推移である、
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紀元前1万2500年前までは、ドイツ民族はイルミン教を信仰していたが、その後、『ヴォータン教(Wotanism/ ヴォータニズム)』の信者が優勢になっていった
※『ヴォータン』とは、北欧神話の主神『オーディン(Odin)』のドイツ語名である。
紀元前1200年、ヴォータン教がゴスラーにあったイルミン教の宗教施設を破壊すると、イルミン教は『エクステルンシュタイネ(Externsteine)』に新しい神殿を建てたが、AD460年にこちらもヴォータン教に占拠された。
また、ヴィリグートの祖先はヴィリニュスの町を建設し、この地ではイルミン教の信仰が常に残っていた。
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ヴィリグートの主張を真に受けるなら、キリスト教が浸透する以前のゲルマン民族がヴォータン(オーディン)を主神としていたのは、ヴォータン教がイルミン教を侵略した結果ということになる。
ヴィリグートの思想は、キリスト教が浸透する以前のゲルマン民族の主流だった北欧神話の世界観を(完全にではないが)否定することにも繋がり、これはもう『ヴィリグートの独自宗教』と考えてよいだろう。
彼はヴォータン教を敵視し、ハインリヒ・ヒムラーに求めてヴォータン教の信者たちを次々とナチスの強制収容所へ送らせたという。
なお、ヴィリグートの著作は『ネオナチ』『ネオフォーク』『ナショナル・ソーシャリスト・ブラックメタル』『ネオペイガニズム』などが発生した秘教的な潮流の中で1990年代に再び注目されるようになった。
参考・引用
■参考文献
●アーリア神話 レオン・ポリアコフ 著 アーリア主義研究会 翻訳 法政大学出版局
●アーリヤの男性結社―スティグ・ヴィカンデル論文集
スティグ・ヴィカンデル 著、前田耕作 編集、 Stig Wikander 原著、檜枝陽一郎 訳、与那覇豊 訳、中村忠男 訳 言叢社
●エッダ―古代北欧歌謡集 谷口幸男 翻訳 新潮社
●いちばんわかりやすい 北欧神話 杉原梨江子 監修 じっぴコンパクト新書
●実用ルーン占い ルーン魔女KAZ 著 出版処てんてる
●ルーン文字入門 無極庵・くじら神殿
●RUNELORE Edred Thorsson 著
●シークレット・ドクトリンを読む ヘレナ・P・ブラヴァツキー 著 東条真人 翻訳 トランス・ヒマラヤ密教叢書
●北極の神秘主義 ジョスリン・ゴドウィン 著、松田和也 翻訳 工作舎
●神秘学大全 ルイ・ポーウェル、ジャック・ベルジェ 著 伊東守男 翻訳 サイマル出版会
●The Secret History of the Reptilians Scott Alan Roberts 著
●失われたエイリアン「地底人」の謎 飛鳥昭雄、三神たける 著 ムー・スーパーミステリー・ブックス
●失われた地底人の魔法陣「ペンタゴン」の謎 飛鳥昭雄、三神たける 著 ムー・スーパーミステリー・ブックス
■参考サイト
●Wikipedia
●WIKIBOOKS
●Wikiwand
●Weblio辞書
●ニコニコ大百科
●ピクシブ百科事典
●コトバンク
●goo辞書
●ホロコースト百科事典
●Theosophy World
●宇宙NEWS LETTER
●FANDOM
●HOHEN'S BLOG
●LALALAミステリー
●note