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ネット陰謀論『マッドフラッドとタルタリア』 その2

ブライアン・ダニングとSkeptoid

ブライアン・ダニング

 『Skeptoid』の主宰者――ブライアン・ダニング氏は、科学および科学的懐疑主義を主なテーマとしています。

 彼のような懐疑主義者は、しばしば心霊主義UFO事件(エイリアン・アブダクションなど)・超能力などのオカルト、あるいは疑似科学を批評の対象とします。

 

 懐疑主義者の1人である『ジェームズ・ランディ(James Randi)』は、こうした主張の虚偽を暴くことで有名になりました。

 彼らのように偽りを暴くことを活動の中心としている人々は、『デバンカー』と呼ばれているそうです。

 

●画像引用 Wikipedia

 今回の記事を書くに当たり、主に参考にさせていただいたのが以下のサイトです。

 

★Skeptoid(Tartaria and the Mud Flood) 

 

 このサイト『Skeptoid』では、『ブライアン・アンドリュー・ダニング(Brian Andrew Dunning)』というアメリカの作家(兼プロデューサー)』が毎週配信している『ポッドキャスト(オーディオやビデオでのブログ)』のことが、記事として読めるようになっています。

 

 ダニング氏が取り扱う主要なテーマは、科学および『科学的懐疑主義Scientific skepticism)』です。

 彼が主催する『Skeptoid』は、「大衆文化に蔓延する疑似科学を吹き飛ばし、より冷静で現実的な思考・方法を以て知識を深めること」を目的としているそうです。 

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………… (lll゚□゚)ハッ!

…………と、ということは、このオカルトブログも批判の対象に……?

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 ま、まあ、それはともかく💦、ダニング氏は、とても鋭い視点で『マッドフラッド』や『タルタリア』のことを述べていました。

 

 そこで、上記の件に関するダニング氏の記事『Tartaria and the Mud Flood』を(前後編に分けて)翻訳してみました。

 次章より、これを紹介しようと思います。

※この翻訳は、ブログ主が『用語の補足』や『注釈』などを入れたうえでの『超訳』となっています。 

 

 翻訳が間違っていたら「大変申し訳ございません!」としかいえないですが、大意は外れていないと思っています。

 また、(先述した通り)本シリーズの記事は、ダニング氏の記事を主な参考としているので、『その1』の記事と被ってしまう内容が多々あることはご容赦ください。


Tartaria and the Mud Flood(タルタリアとマッドフラッド) 前編

マッドフラッドにおける引用写真

 上記の画像は、マッドフラッド理論にて引用される写真の1つです。

 そこには『蒸気ショベル』も写っています。

 

●画像引用 Mud Flood 101 A Primer on Mud Flood Theory

マッドフラッドにおける引用写真

 上記の画像は、マッドフラッド理論にて引用される写真の1つです。

 この写真には、地下層が写っています。

 

●画像引用 Pradigm Threat

蒸気ショベル

 画像は、アラスカにて廃棄された蒸気ショベルです。

 蒸気ショベルは、19 世紀から20世紀初頭の公共工事において、大きな貢献を果たした重機です。 

 

●画像引用 Wikipedia

タータリー(Tartary)図

●画像引用 Mud Flood 101 A Primer on Mud Flood Theory

支配層(イメージ図)

「タルタリアの歴史——そして、マッドフラッドによる文明のリセットは、支配層によって隠蔽された!」

 

 マッドフラッド理論では、上記の説が事実であるかのように語られることが多いようです。

 しかし、通史に関する膨大な記録があることを我々は知っています。

 それらをわざわざ捏造するような途方もない作業を、支配層は実行したというのでしょうか?

 

●画像引用 コウの雑記帳

Googleトレンド

●画像引用 Google

マッドフラッドにおける引用写真

 上記の写真は、マッドフラッド理論にて引用される写真の1つです。

 この写真にも地下層がありますね。

 

 ブライアン・ダニング氏によると、マッドフラッド系の動画は、初出が(おそらく)2016年8月頃であり、2018年の12月頃までは余り人気がなかったそうです。

 ただ、その頃を境に注目されるようになったとか。

 

 そこには、どんな理由があるのでしょうか……?

 

●画像引用 Pradigm Threa

Philipp Druzhinin

 画像は、2016年の8月頃よりマッドフラッド系の動画を投稿していた人物です。

 

●画像引用 Patreon

𒁾以下(右側)は『Skeptoid』の記事の翻訳

 

 ここ数年の間に、インターネット上で新たな世界史の異説が生まれている。 

 この主張は、1800年代のある時期に起こったとされる世界的な大災害にまつわることであり、世界的に高度な文明が消滅――(そのことがきっかけで)現在のような国家が誕生したという話だ。

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 (古き文明を消し去った)大災害は『マッドフラッド(泥の洪水)』と呼ばれている。

 この洪水に伴い、数メートルの高さに及ぶ泥が流れ込んできて、あちこちの家や建物を吞み込んでしまったという。

 (中途半端に)埋もれてしまった都市や町は、『タルタリア』と呼ばれる世界的に高度な文明のもとにあった。

 

 タルタリアは『無償の無線エネルギー(オカルト疑似科学界隈でいわれるフリーエネルギーのこと)』を有し、少なくともその一部には『巨人』が住んでいた。

 マッドフラッドによる大災害は『文明のリセット』であり、古い文明から新しい文明への移行であり、その新しい文明とは、我々の文明のことである。

𒆠

 (以上がマッドフラッドにて語られることの概要だが、これを検証するに当たり)まずは一部の支持者――記事の原文では『adherent(支持者・信者・党員)』――が『マッドフラッド(泥の洪水)理論』と呼んでいる説について、その証拠を調べることから始めてみよう。

 

 昔のモノクロフィルム(白黒写真)には、人々が掘削作業を行っている様子を映したものがある。

 (そうした写真の内容について)特に古い蒸気ショベルラバ隊が使われている場合は――何を掘っているかは問題ではなく――(作業者は)街を覆う深い泥を掘り出していると言えるだろう。

 

 続いて、地下室がある古い建物を映した現代の写真を探し、地下室に窓が付いていたり、(傍で掘削が行われていて)地下室の壁や基礎の部分が露出していたりするものを見つけたら、(支持者たちは)「(元々地上に露出していた)その建物の低層部が、泥に埋もれていたのは明らかだ」と主張するのだ。

 (上記について)否定するつもりはないが、マッドフラッドを信じる人々が、既知の歴史を全て捨て、別の歴史を受け入れようとする動機となった証拠は、それだけなのだ。

 

 (マッドフラッドよりも)大洪水以前の文明が『タルタリア』という呼称になったことの方が、より興味深い。 

〈ブログ主:注〉『その1』の記事でも言及した通り、上記の件については、マッドフラッドがロシアで発生したことに関係していると思われます。

 

 ご存知のように、(タルタリアの由来となった)『タルタル』とは、19世紀半ばまでのヨーロッパで使われていた、満州シベリア中央アジアなどのアジアの秘境に住んでいた人々の総称である。

〈ブログ主:注〉ヨーロッパにおいては、モンゴル帝国遊牧騎馬民族も『タルタル (Tartar)』と呼ばれていました。 

 

 20世紀以前の世界地図では、これらの地域は単に『Tartary(タータリー)』と記されていることが多く、地理的な知識が徐々に増えるにつれて――満州やモンゴルが『中国タータリー(CHINESE TARTARY)』、シベリアが『大タータリー(GREAT TARTARY)』、中央アジアが『独立タータリー(INDEPENDENT TARTARY)』――として分類されていった。

 

 これらの地名は、本当の地名や国名が知られるようになるとすぐに使われなくなったが、(それ故か)このような広い地域がタータリーと呼ばれていたことは、比較的最近まで知られていなかった。

 そして、ユーラシア大陸中央部に『見慣れない名前』を大胆に(あるいは「ずうずうしく?」)表示させた古地図を頻繁に出してくる『YouTube動画』を見ると、かなりの驚きを感じる。

 実際、余りにも驚くべきことなので、人によっては耳を傾けてしまうほどの(インパクトのある)話になってしまうのかもしれない(..……マッドフラッド理論のように)。

 

 陰謀論という言葉は、UFOの話や都市伝説、実際の陰謀などにも誤用されることが多いので、使い過ぎるのは躊躇われるが、マッドフラッド理論はまさに陰謀論の1つである。

 

 マッドフラッド理論の支持者たちは、上記のように『高度な文明を有していたタルタリアの古代史』と『それを破壊したマッドフラッドという歴史的災害』が、現在の『世界政府(いわゆる支配層)』によって『隠蔽』されていると主張している。

 世界政府はその秘密を守るために、歴史家は『偽りの歴史(私とあなたたちが知る一般的な歴史)』を教育し続けるために、共に陰謀を企てているというのだ。

 その理由は、私(ブライアン・ダニング)が調べた限りでは全く明らかにされていないが、それにしても『陰謀論』(な話)だ。

 

 『タルタリアとマッドフラッド』は、(「完全に」とまでは言えないにしても)そのほとんどがインターネット上に存在するという点において、まさに21世紀の陰謀論である。

 

 その物語の一部は何世紀も前に遡るが(それについては次回以降で後述)、体系的にまとめられた主張がなされたのは、(古くても)せいぜい2017年頃に見られるくらいだ。

〈ブログ主:注〉なお、マッドフラッド関連の書籍も販売されていますが、これも基本的にはインターネット情報の寄せ集めのようです。 

 

 2016年8月は、マッドフラッドのアイデアに関する最初の動画が『YouTube』に登場し始めた時期である。

 『Googleトレンド』などのツールにより、そのことがわかった。

 『Googleトレンド』は、Google検索で入力された特定のキーワードの人気度について、時系列で見ることができるツールだ。

 

 『mud flood(マッドフラッド)』『mud flood theory(マッドフラッド理論)』『Tartaria(タルタリア)』――などを検索すると、2018年の12月頃まで、インターネット上ではこれらへの関心がほぼ皆無だったことがわかる。

 (ただ)それ以降になると、インターネットユーザーの間において、上記のテーマに対する関心が高まっていった。

 

 YouTubeは、インターネットにおけるポップカルチャーのトレンドの多くを牽引している。

 故に、YouTubeにアクセスし、指定の日付の範囲内で投稿された(これらをテーマにした)動画を検索してみると、初期に影響力があった動画を(少なくとも1つくらいは)見つけられるだろう。

 

 『フィンランドは存在しない』という陰謀論の『ケース・ゼロ(〈始まり〉ということ?)』となったYouTubeのオリジナル動画を、私たちがどのようにして見つけたか、『Skeptoid』の長年のリスナーなら憶えているかもしれない。

〈ブログ主:注〉『フィンランドは存在しない』という陰謀論についての参考は以下のリンクを参照(世の中には色々な陰謀論があるようです)。

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フィンランドは存在しないという陰謀論

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 『Skeptoid』では、(ブライアン・ダニング氏が陰謀論・疑似科学批判系のライターのため)各陰謀論の発生も含めてその内容をよく調べているようです。 

 

 (上記の陰謀論の発生元を探る際に用いた)その方法論をここでも適用してみると、2016年の8月からマッドフラッドに関する動画を投稿していた『フィリップ・ドゥルジ●ン(Philipp Druzhinin)』というユーチューバーを見つけた。

 

 当初、ドゥ●ジニンの動画は余り注目されず、再生数も少なかった。

 それは『2018年12月~2019年1月』までのことであり、『Googleトレンド』を通じて(インターネット上で)マッドフラッド系の話題が意識されたこの時期を境に、ド●ルジニンの動画は再生数が急増していった。

 何がきっかけだったのか?――(そんなことは)わからないし、どうでもいいことだ。

 

 多くの陰謀論者が『マッドフラッド』の動画を制作しているが、誰が初期から人気を集める幸運を得たかは重要ではない。

 しかし、(敢えて)●ゥルジニンのYouTubeチャンネルを例に挙げるなら、彼の動画(あるいはFacebookの投稿)には、広範囲のありふれた陰謀論が並べられている。

 

 『ロスチャイルド家』や『ジョージ・ソロス』といったお馴染みの『反ユダヤ主義的なテーマ』、あるいは『中央銀行』『イルミナティ』『マイクロチップの埋め込みや5G』『Qアノン』『気候変動の否定』、そして「本当は誰が私たちの生活を牛耳っているのか」など、現代における陰謀論のカタログのようなものが出てくるのだ。

 

 お間違えのないように―― 『タルタリアとマッドフラッド』は、歴史家考古学者地質学者が唱えたのではなく、インターネット上における陰謀論文化の最も暗い下層部から発生したのだ。

 

【前編:終わり】

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 前編の翻訳はここまでです。

 ブライアン・ダニング氏は、極めて常識的に陰謀論を考察しているようです。

 ブログ主としては、(陰謀論に対する)彼の見解に全面的に同意しているわけではありませんが、『マッドフラッド』と『タルタリア』のことについては、「よく調べたものだ」と敬服してしまいました。

 

 この記事の後編では、ダニング氏はさらに鋭い分析を行っています。

 ご興味のある方は、次回にお進みください。


参考・引用

■参考文献

●Mud Flood 101 A Primer on Mud Flood Theory  Tim Ozman 著

 

■参考サイト

●Wikipedia

●WIKIBOOKS

●Wikiwand

●Weblio辞書

●ニコニコ大百科

●ピクシブ百科事典

●コトバンク

●goo辞書

●SKEPTOID 

●懐疑論者の祈り

●Pradigm Threat

●コウの雑記帳

●Patreon

●ニックのブログ