大洪水以前の世界 その6 ゾロアスター教の神話(イラン神話)

6-1

最高神 アフラ・マズダー

●画像引用 Wikipedia

ゾロアスター教開祖 ザラスシュトラ

 『大洪水以前の世界』シリーズの最後となるのは、ゾロアスター教の神話の伝承です。

 

 インド神話とゾロアスター教神話は密接な関わりがあります。

 両者は共にインド・ヨーロッパ語族インド・イラン語派の人々=アーリア人の神話だからです。
 ゾロアスター教は、おそらく世界初の善悪二元論〈注62〉の宗教として有名であり、それを示すようにインド神話とゾロアスター神話では、神と悪魔の関係がはっきりと引っ繰り返ります。
 インド神話で神とされた存在『デーヴァ』がゾロアスター神話では悪魔『ダエーワ〈注63〉』とされ、悪魔扱いされたアスラが神『アフラ〈注64〉』となったのです。
 上記の関係は最初からそうだったわけではなく、インド神話の初期に当たるヴェーダ神話では、アスラも神扱いされており、イランの方でもデーヴァは普通に崇拝の対象でした。

 

 時代が下るに連れてインドとイランの各アーリア人の関係が悪化し、このような善悪の構図が成立したと思われますが、イランにおいてそれが決定的となったのは、ゾロアスター教の開祖――ザラスシュトラ(英名:ゾロアスター〈注65〉)の存在が大きいです。

 彼が開いた教えにより、アーリア人の神々は善悪に分類されました。


 インド神話の主神にして英雄神であるインドラや、絶大な力を持つ暴風神ルドラシヴァ〈注66〉)は悪魔とされました。
 逆に司法の神であるヴァルナは、アフラ・マズダー〈注67〉としてゾロアスター教の最高神となり、契約の神であるミトラは中級の善神『ヤザタ〈注68〉』の筆頭神とされ、後にアフラ・マズダー以上の人気を得ることになります。
 ミトラを主神としたミトラ教〈注69〉はローマ帝国で流行し、初期キリスト教の最大のライバルになりました。
 

  このような分類は、ひとえに法と秩序を重んじるザラスシュトラやその一派の考え方によるものでしょうが、結果としてゾロアスター教が浸透する以前のイラン神話が、どのような内容だったか分かり難くしています。


【注釈 62~69】

 

■注62 善悪二元論

 善悪二元論とは、世の中の事象を善と悪の二つに分類する事で世界を解釈する認識法。歴史的にはマニ教が有名であり、マニ教を意味するマニケイズム(Manichaeism)は善玉・悪玉論の代名詞ともなっている。

 

■注63 ダエーワ

 ダエーワ(アヴェスター語:daēva〈輝ける者〉、古代ペルシア語:daiva)は、イランやゾロアスター教の神話に登場する悪神。
 アンラ・マンユに仕えている悪魔達の総称であり、地獄で亡者達を苦しめる仕事をする悪魔達で、さまざまな姿をしている。
 インドのサンスクリット語におけるDeva(デーヴァ、天部)と共通語源。
 しかし、古代インドでデーヴァが善神として崇拝の対象であり続けたのに対し、古代イランではダエーワは『悪神』『悪魔』という逆の意味になっている。

 

■注64 アフラ

 アフラはゾロアスター教における『神』の意味。
 インド神話ではアスラと呼ばれ、後代では悪魔的な扱いとなる。

 

■注65 ザラスシュトラ(英名:ゾロアスター)

 ザラスシュトラは、ゾロアスター教の開祖である。
 近年の研究では、前10世紀から前11世紀にかけて活躍したといわれるが、研究者によって異なる。
 たとえば、前1750年から前1500年にかけて、また前1400年から前1200年にかけて、イランの伝統では前570年頃、パールシー教では前6000年より以前ともされる。
 一神教を最初に提唱したともいわれるが、ゾロアスター経典の中には、古代アーリア人に共通する多くの神々が登場する。
 したがって、正確には「数多くの神々の中から、崇拝に値する神をアフラ・マズダーだけとした」人物である。
 その教えは、ユダヤ教、キリスト教に影響を及ぼした。

 

■注66 暴風神ルドラ(シヴァ)

 ルドラ(rudra)は、インド神話に登場する暴風神である。
 その名は『泣く、吠える』を意味する語根『rud』に由来し、『咆哮を上げる者』『叫ぶ者』を意味する。
 インド神話初期のヴェーダ神話では目立たない神だったが、後のヒンドゥー教では、シヴァとして最高神の1柱となった。
 また、ルドラはゾロアスター教ではダエーワ(悪魔)とされた。
 ダエーワのサルワ(Saurva)はルドラの別名Śarvaに対応している。

 

■注67 アフラ・マズダー

 アフラ・マズダー(Ahura Mazdā)は、ゾロアスター教の最高神である。
 宗教画などでは、有翼光輪を背景にした王者の姿で表される。
 その名は『智恵ある神』を意味し、善と悪とを峻別する正義と法の神であり、最高神とされる。
 ゾロアスター教の神学では、この世界の歴史は、善神スプンタ・マンユと悪神アンラ・マンユらとの戦いの歴史そのものであるとされる。そして、世界の終末の日に最後の審判を下し、善なるものと悪しきものを再び分離するのがアフラ・マズダーの役目である。
 その意味では、彼は善悪の対立を超越して両者を裁く絶対の存在とも言える。
 中世以降の教義では、パフラヴィー語形のオフルマズド (Ohrmazd)と呼ばれ、アムシャ・スプンタの筆頭スプンタ・マンユと同一視される。
 この場合、古典的な教義におけるアフラ・マズダーの役割(善神と悪神の対立の上にある絶対者)はズルワーンが担う。

 

■注68 ヤザタ

 ヤザタ(Yazata)とは、ゾロアスター教において崇拝される、中級の善神の総称。
 その名はアヴェスター語で『崇められるに値する者』を意味する。
 パフラヴィー語ではヤズド (Yazd)と呼ばれる。
 その多くはインド・イラン共通時代の多神教に由来する自然神で、ゾロアスター教神学においては、アムシャ・スプンタ(最高神アフラ・マズダーに従う七人の善神)より低位であるとされる。
 ヤザタは人間に祀られる事を常に欲しており、また、祀られる事によって人間に恩恵を与えると言う。
 こうした性格はインドのデーヴァと共通しており、ゾロアスター教に取り入れられてなお古い多神教時代の性格を色濃く残していると言える。

 

■注69 ミトラ教

 ミトラ教、ミトラス教あるいはミスラス教(英語: Mithraism)は、古代ローマで隆盛した、太陽神ミトラ(ミスラ)を主神とする密儀宗教。

 ミトラ教は、ゾロアスター教成立以前の古代のインド・イランに共通するミスラ神(ミトラ)の信仰(原始ミトラ教)であったものが、ヘレニズムの文化交流によって地中海世界に入った後に形を変えたものと考えられることが多い。
 紀元前1世紀には牡牛を屠るミトラ神が地中海世界に現れ、紀元後2世紀までにはミトラ教としてよく知られる密儀宗教となった。
 ローマ帝国治下で1世紀より4世紀にかけて興隆したと考えられている。しかし、その起源や実体については不明な部分が多い

6-2

■南極の島――サウスジョージア・サウスサンドウィッチ諸島付近の氷河の下に埋もれた『謎の遺物』

 

  上の画像は、一般的にはUFO(未確認飛行物体)、またはUFOの基地などといわれていますが、巨大な円盤状の遺跡(超古代の情報装置?)にも見えます。

 あるいは、これがゾロアスター教の神話で語られた地下施設『ヴァラ』の片鱗なのかもしれません。

 

 過去にGoogle Earhで確認できたこの画像は、現在では検閲が入り、削除されています。

 これがUFOの基地にせよ、古代遺跡にせよ、事実であれば大発見となるでしょうが、その意味が重大であればあるほど真相が明らかにされない可能性が高いです。

 そんなゾロアスター教にも大洪水の物語はあるのでしょうか?
 結論から言えばあります。
 ただ、旧世界の破滅についてより強調して語られたのは、大洪水ではなく『冬』でした。


 災厄の原因はアフラ・マズダーの敵対者であるアンラ・マンユ〈注70〉でした。

  ゾロアスター教では悪神と定義されるこの神は、アフラ・マズダーの被造物を殺戮すべく邪悪な爬虫類を創造し、破滅的な冬(=氷河期)をもたらしたとか。

 

 この暴挙に対し、アフラ・マズダーは公正な王とされるイマ〈注71〉に以下の啓示を与えました。

 

①ヴァラを建設すること。
 『vara(ヴァラ)』とは『enclosure(囲い地)』、すなわち『城塞』であり、これを地下に建設せよということです。

 

②ヴァラに最も優れた男女、家畜などの獣、樹、果実の種子を2つずつ運び込むこと。


③イマによって選別された人々がヴァラにいる限り、上記の種子が尽きないよう保存すること。


④身体障碍者、腹が飛び出た者(肥満?)、不能者、精神障害者、ハンセン病(伝染病持ち)、貧乏人、虫歯持ち、詐欺師、卑怯者、嫉妬深い者などはヴァラに入れてはならないこと。

 

 ……どうでしょうか。
 上記の物語は、破滅的な氷河期が来たのでより優秀な種を厳選し、人々を地下施設に避難させようとする様子が窺えます。

 カタストロフィー(破滅的災害)への対処としては、『方舟の物語』などより現実味のある物語と言えましょう。


【注釈 70~71】

 

■注70 アンラ・マンユ

 アンラ・マンユ(Angra Mainyu, Aŋra Mainiuu)またはアフリマン(Ahriman)は、ゾロアスター教に登場する悪神である。
 善悪二元論のゾロアスター教において、最高善とする神アフラ・マズダーに対抗する絶対悪として定義される。
 創世神話によれば、世界の始まりの時、創造神スプンタ・マンユはもう一人の創造神アンラ・マンユと出会ったという。
 そして、スプンタ・マンユは世界の二大原理のうち『善』を、アンラ・マンユは『悪』を選択し、それぞれの原理に基づいて万物を創造したという。
 ヴェンディダード(Vendidad)第1章によると、アフラ・マズダーが光の世界を創造するとすかさずアンラ・マンユは対抗すべく冬、病気、悪などの16の災難を創造したという。

 アンラ・マンユはさらに、アフラ・マズダーが創造した世界を破壊し被造物を殺戮すべく、悪竜アジ・ダハーカを生み出した。
 この世が始まる前の戦いでアフラ・マズダーに敗れて深闇に落とされるが、徐々に勢力を盛り返し、再びアフラ・マズダーと戦うとされている。
 実体はないが、この世に現れるとき、ヘビやトカゲといった爬虫類の姿で出現するとされる。

 一説によると、インド神話の風神である『ヴァーユ』と同一の神だという。

 

■注71 イマ

 イマは(Yima)とはゾロアスター教の神話に登場する人物。
 イラン最古の王朝であるベーシュダード王朝の王の一人で、インド神話のヤマ(閻魔)に相当する。彼の父はウィーワフントで、こちらもインド神話におけるヴィヴァスヴァットと対応している。

6-3

エドワード・スノーデン

 政府の機密文書を公開して注目されたエドワード・スノーデン氏は、地底人の存在も暴露しました。

 

画像引用 Wikipedia

ジャムシード(イマ)

 ゾロアスター教の神話において、『ノア』の役割を果たす聖王イマは、ペルシア語では『ジャムシード』と呼ばれています。

 

●画像引用 Wikipedia

 ゾロアスター教の神話では、限られた生存空間の中に、生存に適さない人間や劣等な種を入れることはできないと考えられたのでしょう。
 つまりこの神話では、現実でも同様の状況があれば起こり得そうな『冷徹な選別』が語られているのです。

 もっとも、選ばれなかった人々は、当然不満を抱いたでしょうが。

 

 なお、NSA(アメリカ国家安全保障局)CIA(中央情報局)の元局員であり、政府の機密文書を公開して注目されたエドワード・スノーデン氏は、

DARPA(ダーパ:国防高等研究計画局)の大半の人たちは地球のマントルに人類よりもはるかに知的な生命体が存在していると確信している」

 

――という旨の発言をしているとか。

 いわゆる地底人の存在を暴露したわけですが、その実態はゾロアスター教の伝承で伝えられた『ヴァラ』に避難した人々のことなのかもしれません。

 彼らは超古代文明の住人の末裔、あるいは生き残りということになるので、現代人より優れた知性や高度な文明を持っていたとしてもおかしくはないでしょう。


 ゾロアスター教は善悪二元論を掲げる宗教ですが、上記の選別は道徳的な規準だけで決められたわけではないことは明らかです。
 秩序を乱さない人格の他に財産があること、そして生物として『生き残るに相応しい資質があること』が求められたのです。

 現代的に言えば、優生学的な論理も人間選別の基準となったわけですね。

  事前に『ヴァラ(地下施設)の存在』と『ヴァラに入居できる人間の選別基準』のことが周知されていれば、公正な王とされるイマでも民衆から反乱を起こされたかもしれません。

 神話ではそうした話は伝えられていないので、ヴァラの建造と選別された人々の避難は秘密裏に行われたのでしょうか。

 

 ちなみにこのイマとはインド神話のヤマ(閻魔大王〈注72〉)と同じ語源の人物であり、同神話におけるマヌと同じ役割を果たします。
 啓示を受けてイマが造設したヴァラには、数千人分の『種子』が入れられ、この中に避難した人々は幸福な人生を送ったそうです。


【注釈 72】

 

■注72 ヤマ(閻魔大王)

 ヤマは本来はインド・イラン(Indo-Iranian)共通時代にまで遡る古い神格で、『アヴェスター』の聖王イマ(ジャムシード)や北欧神話の巨人ユミルと同起源である。
 『リグ・ヴェーダ』では、ヤマとその妹ヤミー(Yami)はヴィヴァスヴァットの子で、母はトヴァシュトリの娘サラニューとされた。
 人間の祖ともされ、ヤマとヤミーの兄弟姉妹婚により最初の人類が生まれた。
 ヤマは人間で最初の死者となり、死者が進む道を見いだした末、死者の国の王となった。

 虚空のはるか奥に住むという。
 インドでは、古くは生前によい行いをした人は天界にあるヤマの国に行くとされた。
 そこは死者の楽園であり、長寿を全うした後にヤマのいる天界で祖先の霊と一体化することは、理想的な人生だと考えられていた。
 しかし後代には、赤い衣を着て頭に冠を被り、手に捕縄を持ち、それによって死者の霊魂を縛り、自らの住処・国に連行されると考えられた。
 ヤマの世界は地下だとされ、死者を裁き、生前に悪行をなした者を罰する恐るべき神と考えられるようになった。
 骸骨の姿をした死の病魔トゥルダクや神犬サラマーから生まれた4つ目で斑の2匹の犬サーラメーヤ(Sarameya)を従える。
 仏教の漢訳では閻魔大王となる。

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■チベット密教に伝わる理想郷シャンバラを描いたタンカ(チベットで仏教に関する人物や曼荼羅などを題材にした掛軸)

 

 そのルーツはアスラの地下の楽園であるパーターラ、さらに遡ればゾロアスター教の聖典アヴェスターに記された地下の楽園(避難所)であるヴァラだと推測できます。

 

●画像引用 シャンバラへの道

 上記から興味深いことが推測できます。

 

 「ヴァラが楽園だった」と記述しているのは、ゾロアスター神話の聖典『アヴェスター〈注73〉』であり、これはアフラ=アスラ側視点の文献となります。

  一方、インド神話のアスラは地下世界の楽園パーターラ〈注74〉に居住しています。

 つまりアフラ=アスラは、ゾロアスター教の神話でも、インド神話でも『地下世界の楽園』に住むと言及されたことになるのです。


  また、この物語はチベット仏教〈注75〉のシャンバラ伝説〈注76〉と繋がっている可能性があります。

 シャンバラは仏教王国の楽園ですが、ヒンドゥー教の視点に立てば仏教の仏・菩薩たちも神々たるデーヴァの敵対者=アスラに当たるからです。

 

 もう少し想像を広げると、インド神話のアスラ(=アフラ)は最初から地下世界にいたわけではなく、デーヴァ(ダエーワ)に追われて地下世界に避難せざるを得なくなったと考えることもできます。  
 つまり現代の世界で神とされる存在(ここでの例えはデーヴァ)は、元々は侵略者だったというわけです。

 こう言い換えることもできます。

 

 アスラはインド神話における巨人に当たり、その彼らは一神教の神話ではグリゴリネフィリム、メソポタミア神話ではアヌンナキまたはイギギ、ギリシア神話ではティターンなどと呼ばれ、超古代文明の時代は地上の支配者だった。
 そうした存在が『新たな神』に敗北したことで地下世界に避難した――と。

 

 そして勝利者となった神の支配下において、古代から現代に至る『我々の歴史』が展開されたというわけです。


【注釈 73~76】

 

■注73 アヴェスター

 アヴェスターとはゾロアスター教の根本経典である。
 なお『アヴェスター』というのは現代ペルシア語読みで、中世ペルシア語ではアパスターク(Apastāk)、或いはアベスターグ(Abestāg)と呼ばれていた。
 アヴェスター語という言語で記されている。
 口承伝持で長らく伝えられた後、3世紀頃に発明されたアヴェスター文字で書物に記された。
 しかし、イスラム教の迫害などを受けて散逸し、現存するテキストは、当時の1/4に過ぎないという。

 

■注74 パーターラ

 パーターラ(pātāla)とは、インド神話のプラーナ文献の世界における7つの下界(地底の世界)の総称またはその一部の名称のことである。
 パーターラは三界に属さない冥界ではあるが『地獄』ではない。
 第3層スタラはマハーバリがヴィシュヌにより与えられた領地であるが、『バーガヴァタ・プラーナ』においては苦しみや病気、困難などが決して訪れることのない楽園として紹介されている。
 また、インドラの従者であるマータリは自分の娘に嫁ぐ最高の婿を探す為にパーターラを訪れており、神々でも満足できなかったマータリはそこでナーガのスムカを見いだした。

  

■注75 チベット仏教

 チベット仏教(チベットぶっきょう)は、チベットを中心に発展した仏教の一派。
 チベット仏教は、根本説一切有部律の厳格な戒律に基づく出家制度から、大乗顕教の諸哲学や、金剛乗の密教までをも広く包含する総合仏教であり、独自のチベット語訳の大蔵経を所依とする教義体系を持つ。中国、日本、チベットなどに伝わる北伝仏教のうち、漢訳経典に依拠する東アジア仏教と並んで、現存する大乗仏教の二大系統のひとつをなす。

 

 

■注76 シャンバラ伝説

 シャンバラ(Shambhala)は、『時輪タントラ』に説かれる伝説上の仏教王国である。
 同タントラではシャンバラの位置はシーター河の北岸とされ、シーター河が何を指すかについては諸説あるが、中央アジアのどこかと想定される。
 シャンバラ伝説は『時輪タントラ』とともにチベットに伝わり、モンゴルなど内陸アジアのチベット仏教圏に広く伝播した。
 この伝説は西洋の神秘思想家らの関心を引き、欧米でも有名になった。

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乳海攪拌が描かれた絵画

 『乳海攪拌』とは、不老不死の霊薬『アムリタ』を巡るインド神話の物語です。

 アムリタを製造にする当たり、普段は対立しているデーヴァとアスラが最初は協力し合いました。

 ですがアムリタが出来上がった後、これを巡って争うことになりましたので、結局のところ、両者が争うことになるカルマ(業)は変わらなかったようです。

 ゾロアスター教では、上記の2大勢力は善悪ではっきり分けられましたが、実際はいずれも絶対の善とは言えないのかもしれません。

 

●画像引用 Wikipedia

ヴィマナ

 ヴィマナはインド神話で描かれた航空機であり、その中には空中要塞のような巨大なものもあります。

 インド神話と関連のあるゾロアスター教の神話でも『ガラスの玉座』のようにヴィマナと類似の航空機が言及されました。

 

 インド神話とゾロアスター教の神話は、共通して二大勢力が覇権を争う戦争の物語が伝えられています。

 特にインド神話では、ヴィマナまで導入された壮大な空中戦まで描かれています。

  そうした戦争の末路として、ゾロアスター教の神話で伝えられるような『破滅的な氷河期(核の冬?)』がもたらされたのかもしれません。

 

●画像引用 Wikipedia

 ゾロアスター教の神話には、他の神話にはないリアリズムを感じさせます。
 その理由の一端は、『敗北者の視点』から物語が描かれているからかもしれません。

  彼らの物語では、侵略者によって地上を追われただけなので大洪水以前の人間の過失は言及されません。

 

 ひょっとしたら、一神教の神話で記されたグリゴリやネフィリムが行ったような『悪徳』があったのかもしれません。
 何せ、インド神話では悪魔とされ、仏教神話では戦いに明け暮れる存在といわれたアスラ=アフラの世界です。

 アスラ=アフラに属する神々や司祭(マギ)たちは、その信徒達に都合の悪い部分を伝えなかった可能性も考えられるでしょう。

 1つはっきりしていることは、公正な王とされるイマ、そしてその神であるアフラ・マズダーが、(緊急事態とはいえ)人格に関係なく社会的弱者を見捨てたことです。

 ということは、実は彼らはゾロアスター教で語られるような理想の統治者でなく、「弱者には厳しい政治を行ってきたのでは?」と勘繰ることもできます。

 そしてゾロアスター教で悪魔とされたダエーワとは、「偽善を掲げて圧政を敷いてきた支配者たちに対する抵抗勢力だったのでは?」という可能性も考えることができるのです。

 故にダエーワは、インド神話では『神(デーヴァ)』とされたのかもしれません。

 ただ、こちらの支配は評判がよくない身分制度『カースト』が知られています。

 アフラ(悪魔的な言い方ではアスラ)とデーヴァ(悪魔的な言い方ではダエーワ)、いずれに勢力に付くにせよ、弱者の運命は余り変わらないのかもしれませんね。

 

 では、アラフ・マズダーが世界の神として君臨していた超古代(?)はどのような文明社会だったのでしょうか?
 残念ながら、こちらも詳しく言及されている部分は多くありません。

 ただアヴェスターによると、地上にいた頃のイマは、アフラ・マズダーが創造した生類を上手く養って数を増やし、『大地』が手狭になると、その都度生活圏となる土地を広げていったそうです。
 この描写の意味は、地上を開拓していったということでしょうか。


 『破滅的な冬』が訪れた時代には、巨大地下シェルターの都市である『ヴァラ』を建設できた他、世界中の出来事を観察できる『奇跡の盃』や空を飛翔できる『ガラスの玉座』もあったそうです。
 『奇跡の盃』はインターネット〈注77〉を、『ガラスの玉座』はインド神話における航空機『ヴィマナ〈注78〉』を連想させ、これだけでもかなりの高度な文明だったと想像できます。

 

 現代は『地球温暖化』が叫ばれる一方で、氷河期の到来に警鐘を鳴らす学者たちもいます。

 もし、後者の未来が近いとすれば、ゾロアスター教の神話に描かれたカタストロフィーの物語は、我々に重要な示唆を与えます。

 

 そう遠くない未来において、我々も『ヴァラ(地下避難所)』に入れるかどうかで選別されることになるかもしれませんね。

 

 以上、ゾロアスター教の大洪水以前――とは違いますが、旧世界崩壊以前の物語でした。

 ゾロアスター教の神話では、氷河期の後に大洪水が発生したと記載されていますが、この場面において人間が生存をかけて行動する物語はありません。

 

 次回はまとめに入ります。 


【注釈 77~78】

 

■注77 『奇跡の盃』はインターネット〈注77〉

 上記のような書き方をしたが、『イマ(ペルシャ語:ジャムシード)の盃』は、科学的な技術ではなかったようだ。

 伝承によると、イマは『不死の霊薬』に満ちた杯によって、7つの天国、世界中の出来事、そして未来などを見通すことができたという。

 そういう意味では、この盃は意識をトリップさせる薬物を連想させる。

  

■注78 ヴィマナ

 ヴァマナはヒンドゥー教やサンスクリットの叙事詩に登場する空飛ぶ宮殿、或いは戦車である。
 サンスクリット語であるヴィマナ(vi-māna)は字義をとれば「計り分けること」あるいは「計り分けられたもの」という意味になる。
 モニエル・ウィリアムズは、ヴィマナを「神々の車、或いは戦車、または空を飛び自動で動く乗り物」と定義している。
 文献によってそれは車だったり、棺や船だったり、皇帝の宮殿であったり、中には7階建ての宮殿であるという描写も見られる。

参考・引用

■参考文献

●The Zend Avesta, Part I The Vendîdâd (English Edition)   Friedrich Max Müller 著  James Darmesteter 英訳

●神々の魔術 グラハム・ハンコック  著、大地舜 訳 角川書店

アーリヤの男性結社―スティグ・ヴィカンデル論文集

 スティグ ヴィカンデル 著、前田耕作 編集、 Stig Wikander 原著、檜枝陽一郎 訳、与那覇豊 訳、中村忠男 訳 言叢社 

 

■参考サイト

●Wikipedia

●excite. ニュース

●フランボワイヤン・ワールド

●世界史の窓